POINT 「機械割 出玉率 違い」で検索すると、「ほぼ同じ」「機械割は実測値、出玉率は予測値」「出玉率が正式名称」など、説明がバラバラに見えて戸惑った人は多いはずです。結論から言うと、遊技者やホールの現場では「機械割」と「出玉率」はほぼ同義として使われています。少なくとも数式上の定義は同一です。
機械割・出玉率の定義式
機械割・出玉率(%)=(OUT総数)/(IN総数)×100

しかし一歩踏み込んで法令や型式試験の構造を見ると、そこには「用語の違い」にとどまらない、パチスロ独自の存在である「リプレイ(再遊技)」の扱いをめぐる、出玉率計算そのものに関わる論点(解釈の相違)が存在します。本記事では、「機械割とは何か」で書ききれなかった、用語の整理から、17,500G試験という現場の計算構造まで掘り下げます。

導入 なぜパチンコでは「機械割」と言わないのか

パチンコを打つ人は、台の性能を語るときに「ボーダー」や「回転単価」という言葉を使います。しかし「パチンコの機械割」という言い方は、まずしません。一方パチスロでは、「機械割」と「出玉率」という2つの言葉がほぼ同義として飛び交います。この非対称性こそが、この記事の出発点です。

実は、公的な資料においてはパチンコ・パチスロ共に「出玉率」のみが正式に使用されており、「機械割」という言葉については定義自体が存在しません。

昭和60年国家公安委員会規則第4号(最終改正:令和7年11月28日施行)の条文本則自体には、実は「出玉率」という語は登場しません。本則が定めているのは、あくまで「獲得する遊技メダル等の総数」と「投入をした遊技メダル等の総数」の比を一定の範囲に収めるべきこと、という比率の規定です。

では「出玉率」という言葉はどこで正式に使われているのかというと、同規則第7条に基づき検定申請時に提出が義務づけられている、台の構造や性能を記した仕様書(法令上は「諸元表」と呼ばれる書類)の様式です。パチンコもパチスロも、この様式の中では次のように「出玉率」という語で定義されています。

パチンコ(別記様式第2号):

条文

「10時間出玉率」とは、10時間に発射させた遊技球の総数のうち獲得する遊技球の総数の割合をいう。

遊技機規則 別記様式第2号(パチンコ)

パチスロ(別記様式第3号):

条文

「17,500回出玉率」とは、17,500回の遊技において投入した遊技メダル等の総数のうち獲得する遊技メダル等の総数の割合をいう。

遊技機規則 別記様式第3号(パチスロ)

※別記様式第2号にはこのほか「1時間出玉率」「4時間出玉率」が、別記様式第3号には「400回出玉率」「1,600回出玉率」「6,000回出玉率」が、それぞれ同様の形で定義されています。

つまり、「出玉率」という言葉は本則には出てこないものの、本則を受けて作られた法定の申請様式のほうにはっきりと現れる、という構造になっています。

では、法令上どちらも「出玉率」と呼ばれているのに、なぜパチスロだけ「機械割」という俗称が、しかもほぼ出玉率と同義の言葉として定着したのでしょうか。

推測(未検証)

ここから先は一次資料による裏付けのない、あくまで推測です。パチンコで使われるのは実際に発射された「玉」そのものであり、「出玉率」=「玉が出た割合」は、比喩を挟まない、ほぼ字義通りの言葉です。一方パチスロで実際にやり取りされるのは「メダル」であり、「出玉率」という表現はやや比喩的にならざるを得ません。パチスロが「回胴式遊技機」という、リールが物理的に回転する機械としての性格を強く持つ遊技機であることを考えると、「機械の割合」という言い方の方が実感に馴染みやすかった、という可能性は考えられます。ただし、これはあくまで言語的な直感に基づく仮説であり、「なぜ機械割という言葉が生まれ、定着したのか」という成立経緯そのものを記した一次資料は見当たりません。確実に言えるのは、次に見る通り少なくとも1990年代末には「機械割=出玉率」という説明がすでに定着していた、というところまでです。

国立国会図書館が運営するレファレンス協同データベースには、「出玉率」と「機械割」の意味の違いについて司書が複数の文献にあたって回答した記録が公開されています。これは司書が実際に利用者からの調べもの相談を受け、書籍にあたって確認した調査記録であり、著者名・出版社・発行年・ページ数・NDL請求記号まで明記された、信頼性の高い一次調査の記録です(ただし、あくまで「この本にはこう書いてあった」という司書の記録であって、書籍そのものを直接引用しているわけではない点には留意してください)。

そこでは、室伏哲郎著『パチンコ・パチスロ白書』1998-1999(現代書林、1998年3月、NDL請求記号【DH475-G228】)のp.257「機械割」の項に「出玉率。パチスロで台の出玉性能を表す言葉。」とあり、同書p.264「出玉率」の項には「打ち込んだ玉に対する出玉の割合の店側の呼称。」とあることが紹介されています。また、竹書房『スーパーパチスロ777』26(10)=410号(2018年2月、NDL請求記号【Z31-846】)のp.112「パチスロ用語辞典」には「機械割 パチスロの出玉率のことをいう。」とあります。

これらの記録からは、少なくとも1990年代末の時点で「機械割=出玉率」という説明が定着していたことが分かります。興味深いのは、1998年の資料では「出玉率」の方がもともとホール(店)側の呼称とされていたことです。現在では「機械割」がむしろ打ち手側でよく使われる言葉という印象がありますが、この呼び分けを過度に一般化するのも危険です。メーカーが営業資料などで「設定ごとの機械割」としてスペックを紹介しているケースもありますし、ホール側の用語も会社(法人)ごとに幅があると考えられます。「打ち手=機械割、店・メーカー=出玉率」という単純な図式ではなく、時代や発信者によって使われ方に揺れがある、という理解が実態に近いでしょう。

現在の主要な解析・攻略サイトを見ても、見出しと本文とで「出玉率」「機械割」が入り交じって使われている例が多く、業界全体として統一されたルールが整備されているとはっきりわかるわけではありません。個々のサイトごとには内部で一貫した表記ルールを持っているところもあるかもしれませんが、それを横断的に裏付けるところまでは今回確認できていません。

しかし、ここまでの話はあくまで「何と呼ぶか」という用語の違い(名称の揺れ)の説明にしかなりません。パチスロの出玉率を考えるうえで本当に複雑で面白いのは、パチンコには存在しない「リプレイ(再遊技)」という仕組みの存在です。このリプレイの扱いをめぐって、単なる呼び方の問題にとどまらない「出玉率計算そのものに関わる深い論点」が浮かび上がってきます。

第1章

「機械割=実測値、出玉率=予測値」は本当に正しいのか

実は、公表スペックの段階で区別が崩れている

ネット上では、「機械割は実際に打った結果から求める実測値、出玉率は機械のスペックから計算した予測値」と説明されることがあります。しかし、実際のメーカー公表スペックや専門誌を見ると、設定1〜6の性能を「機械割○○%」と表記する場合もあれば、「出玉率○○%」と表記する場合もあります。つまり、「機械割」という言葉が使われているから実測値、「出玉率」だから予測値、という単純な対応関係にはなっていません。

では、機械割と出玉率は何が違うのでしょうか。ここを整理するには、「何と呼ぶか」と「どうやって数字を算出したか」を分けて考える必要があります。

同じ「113%」でも、どうやって算出したかは別問題

ここから、数字を理解するときに分けて考えるべき3つの軸が見えてきます。

軸具体例
用語(何と呼ぶか)機械割 / 出玉率
算出方法(どう数字を出したか)理論値 / シミュレーション値 / 試験結果 / ホール実績
条件(どの条件で出したか)設定1〜6 / 技術介入成功率 / 試験区間など

同じ「113%」という数字を見ても、それが理論計算による値なのか、モンテカルロシミュレーションによる値なのか、実機を大量に試行した測定値なのかは、「機械割」「出玉率」という言葉そのものからは判別できません。

機械割・出玉率は、あらゆる条件を受け入れる「器」のような言葉

さらに重要なのは、「機械割」も「出玉率」も、算出方法や条件を問わず、その前にどんな修飾語を置いても成立する、という点です。例えば、次の表現はすべて自然な日本語として成り立ちます。

これらは、「機械割」の部分を「出玉率」に置き換えても、意味も自然さもまったく変わりません。つまり両者は、算出方法や条件という修飾語をまったく選ばない、あらゆる条件付けを受け入れる「器」のような概念であり、この点に関しては両者の間に違いは存在しません。

では、法令・型式試験の「出玉率」は予測値なのか

ここで話がややこしくなります。導入で見た通り、法令上の型式試験では「出玉率」という言葉で統一されており、「400回出玉率」「1,600回出玉率」「6,000回出玉率」「17,500回出玉率」という区分が申請様式に定められています。

これは、遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則別表第五(1)ロ(ホ)(ヘ)を見ると具体的に確認できます。400回・1,600回・6,000回・17,500回のそれぞれの区分について、実際に回胴回転装置を作動させ回転停止装置を操作する試験(ホ)と、内部抽せんの結果、条件装置が作動した場合には獲得できる最大枚数の役をすべて獲得したものとみなす「シミュレーション試験」(ヘ。条文上もこの語がそのまま使われています)が、対になって規定されています。

ただし、ここは実射試験/シミュレーション試験の二分法ではなく、三段階で捉えるのがより正確です。(ヘ)は「内部抽せんを行い」と明記されている通り、乱数抽選を伴う試行である以上、400回・1,600回のような有限回数の結果には分散(ばらつき)が生じます。目押しなどの技術介入によるばらつきを取り除いた「理想プレイでの試行」ではあっても、確率と払い出し枚数から式一発で答えが一意に決まる、試行を伴わない純粋な理論値とは性質が異なります。

この「試行を伴わない理論値」は、実は同規則の別表第一(試験の方法)が定める段階で確認されています。

条文

試験は、次に定めるところにより行う。 (1)設計書等審査 認定申請書、検定申請書、遊技機試験申請書又は型式試験申請書及びこれらに添付しなければならない書類に記載された申請に係る遊技機の構造、材質及び性能の内容が技術上の規格に適合しているか否かを審査する。 (2)対比照合審査 申請に係る遊技機の構造、材質及び性能と試験に係る遊技機とを対比照合する。 (3)遊技機の試験 試験に係る遊技機について、申請に係る遊技機の構造、材質及び性能を有しているか否か並びに技術上の規格に適合しているか否かを実地に試験する。

遊技機規則 別表第一(試験の方法)

(1)設計書等審査は、申請書類(回胴式遊技機であれば別記様式第3号)に記載された出玉率の設計値そのものが技術上の規格に適合しているかを確認する書類審査であり、実機を回す前段階で理論値を確認する手続きにあたります。(2)対比照合審査は申請内容と試験用の実機(ロムを含む)との一致を確認する段階、(3)遊技機の試験が、別表第五(ホ)の実射試験と(ヘ)のシミュレーション試験にあたります。

つまり型式試験の出玉率確認プロセスは、理論値(設計書等審査による書類確認)→シミュレーション試験(技術介入抜きの試行)→実射試験(技術介入込みの試行)という三段階で構成されている、と整理するのがより正確です。したがって、型式試験における「出玉率」は、段階によって理論値・シミュレーション試験の結果・実射試験の結果のいずれかを評価している場合がある、ということになります。

では、メーカーが公表する「機械割113%」「出玉率113%」は、具体的に何を意味しているのでしょうか。それが理論計算値なのかモンテカルロ法などによるシミュレーション値なのか、そしてどのような条件(試行回数、対象とするゲーム区間など)で算出したものなのかは、公表資料からはっきりしないことがほとんどです。

この不透明さは、スマスロのようにゲーム数区間で性能が変わり得る機種では特に大きな問題になります。有利区間の差枚数リセットや朝一恩恵の仕組み上、設定変更後どれだけのゲーム数区間を想定するかによって、同じ「設定1」でも公表される数字が変わり得るためです。例えば「設定1・機械割97%」という機種でも、リセット直後から1回当選するまでのような限られた区間だけを切り取れば103%相当になる、といったケースは十分考えられます。しかし、設定変更時から何千G程度を対象に算出した数字なのかをメーカーが明示しないことが多く、この部分は事実上ブラックボックス化しています。

したがって、17,500回出玉率のような型式試験の数値を、公表スペックにおける「予測値」と単純に同一視することもできません。

話が少しそれましたが、「機械割だから実測値」「出玉率だから予測値」という対応関係は成立しません。機械割と出玉率は「何と呼ぶか」という用語の問題であり、理論値・シミュレーション値・実測値のどれに当たるかは「どう算出されたか」という別の問題です。数字を見る際には、名称だけを見るのではなく、その数値がどのような条件で、どのような方法によって算出されたものなのかを確認する必要があります。

【補足】「出玉率」と「機械割」、この記事での使い分けについて

ここまでの整理をまとめると、「出玉率」は法定の申請様式(諸元表)に登場する語であり、型式試験における理論値・シミュレーション試験の結果・実射試験の結果のいずれについても、この「出玉率」という語で表記されます(ただし別表第五の技術上の規格そのものは「出玉率」という語を使わず、獲得数と投入数の比率を直接規定している点は、導入で確認した通りです)。「機械割」は、それに対応する法令上の定義を持たない、業界で長く使われてきた慣用語です。

メーカーが新台発表時に公表する数値(「機械割◯◯%」「出玉率◯◯%」)は、いずれの表記であっても型式試験の結果そのものではありません。その数値がどのような算出条件(理論計算か、モンテカルロ法などのシミュレーションか、想定ゲーム数や区間の取り方など)に基づいているのかは、公表資料だけでは必ずしも明らかではありません。どちらの語を使うかはメーカーやホールの選択に委ねられており、法的な制約はありません。

そのため本記事でも、「機械割」「出玉率」はほぼ同義の語として、文脈に応じてどちらも使用しています。

第2章

リプレイ(再遊技)は出玉率計算でどう扱われるべきか?

導入で見た通り、法令上はパチンコもパチスロも同じ「出玉率」という言葉で統一されています。それでもパチスロでこの議論が特に複雑になるのは、導入で見た「出玉率」と「機械割」という用語の混用に加えて、パチンコにはない「リプレイ(再遊技)」という構造上のギャップが存在するためです。

パチンコの場合、玉を1個発射すれば必ずそれに応じたIN、入賞すればOUTが生じます。つまりパチンコには、「玉を使わずに次の遊技を行える」というリプレイ(再遊技)に相当する仕組み自体が存在しません。一方パチスロには、メダルを一切消費せずに次ゲームを回せるリプレイが存在します。この違いが、出玉率の計算をめぐる論点を生んでいます。

このリプレイは、遊技機規則の別表第二(技術上の規格における用語の意味)(3)イで、回胴式遊技機に固有の用語として次のように定義されています。

条文

「再遊技」とは、遊技メダル等の投入(貯留装置に係るボタンその他の装置の操作により遊技メダルを遊技の用に供することを含む。)をすることによらずに行うことができる遊技をいう。

遊技機規則 別表第二(3)イ

定義自体は「投入をせずに行える遊技」というだけで、リプレイの獲得(OUT)やリプレイ後の投入(IN)を出玉率の計算上どう数えるかについては、何も書かれていません。

なお、「投入」という語自体にも複数の定義があります。別表第二(1)カの共通定義には、「投入」とは遊技者が遊技メダルを遊技機内部に入れることであると解しつつ、わざわざ「『再遊技』以降の『投入』とは意味が違う点について留意のこと」という注記が付いています。一方、回胴式遊技機に固有の別表第五(1)イ(ロ)では、「投入」は遊技メダル等を遊技機内部に入れることに加え、貯留装置や遊技メダル数表示装置のボタン操作によって遊技メダル等を遊技の用に供する一連の動作も含む、とやや広く定義し直されています。警察庁自身がわざわざ注意を促すほど、リプレイ前後の「投入」の扱いは紛らわしい構造になっているのです。

もう一点、パチスロの出玉設計で欠かせない「リプレイ(再遊技)」の確率についても、同規則の別表第五(1)ハ(ニ)で厳密に定められています。

条文

設定ごと及び規定数ごとに、再遊技に係る条件装置が作動する確率は、73分の10以上の値のうちからあらかじめ定められたものであり、次に掲げるときを除き、変動するものでないこと。

遊技機規則 別表第五(1)ハ(ニ)

一般に「リプレイ確率は約1/7.3」と言われますが、条文の文言は「73分の10(=約13.7%)以上」という下限の規定です。「これより低い確率にしてはならない」という最低ラインが定められているのであって、上限を定めた規定ではありません。以下のモデルでは、この下限値をそのままリプレイ確率として使って計算します。

ここで最大の論点となるのが、多くの機種で主流となっている3枚掛け遊技において、「リプレイ成立時の3枚(OUT)」と「リプレイ後の次ゲームの3枚(IN)」を、出玉率の計算上どうカウントすべきかという点です。

ホールの実務やユーザー目線の期待値計算では、リプレイ成立によって「3枚分の払い出しを受けた」とみなしてOUTに3枚を計上し、次ゲームのレバーオンで「その3枚をそのまま自動投入した」とみなしてINに3枚を計上する——いわば「3イン・3アウト(3/3)」方式が、事実上の前提として広く使われています。

この方式が広く使われている背景には、法令解釈以前に実務上の便利さもあります。3/3方式であれば、リプレイの成立回数を個別に把握しなくても、総IN(投入枚数)は常に「消化ゲーム数×掛け枚数」という一定値になり、差枚数(OUT−IN)も総ゲーム数と総OUTだけから素早く計算できます。0/0方式ではリプレイの成立回数をその都度差し引く必要があり、この単純さが失われてしまいます。

一方で、この前提には、条文の文言に即したもう一つの読み方がつきまといます。別表第五(1)ル・ヲが規定する17,500回試験の条文は、出玉率を「獲得する遊技メダル等の総数」「投入をした遊技メダル等の総数」という言葉で定義しています。リプレイ成立時、ホッパーからメダルは物理的に排出されず、次ゲームでもプレイヤーの手からメダルが物理的に投入されるわけではありません。この物理的な事実を条文の言葉にそのまま当てはめれば、「投入も獲得もされていない(0枚)」という「0イン・0アウト(0/0)」という数え方も、文理解釈として一応成立してしまいます。

これは、別表第二(3)イが定める「再遊技=投入によらずに行うことができる遊技」という再遊技そのものの定義(あくまで実機の物理的な動作を縛る規格)を、出玉率の集計ロジックにそのまま横滑りさせてしまっている点で、本来別の話(動作の規格と、統計の計算)を混同した解釈だとも言えます。しかし、別表第五(ル)(ヲ)という試験そのものを規定する条文の言葉を字義通りに読んだ場合にも同じ帰結にたどり着けてしまう以上、これを単純な「勘違い」や「規格の誤用」として片づけることもできません。条文自体が、この点について沈黙している、というのが実情です。

そこで、この「0/0」という読み方が実際にどれだけの歪みを生むのかを、具体的な数字に当てはめて検証してみます。法令下限値であるリプレイ確率1/7.3(=10/73)と、実質出玉率110%(差枚+219枚/730G)というモデルで確認しましょう。

モデル① 機械割が100%を上回る場合(機械割110%)

730ゲームをすべて3枚掛けで消化し、そのうちリプレイが100回成立した(差枚+219枚=実質110%相当)と仮定した場合の比較です。

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機械割が100%を上回る場合(機械割110%)
3/3方式0/0方式
総IN730G×3枚=2,190枚2,190枚−300枚=1,890枚
総OUT2,190枚×110%=2,409枚2,409枚−300枚=2,109枚
差枚数+219枚+219枚(不変)
出玉率2,409÷2,190=110.0%2,109÷1,890=111.6%

ゲーム数を固定した場合、差枚数(+219枚)は変わらないにもかかわらず、0/0方式では分母(IN)・分子(OUT)の双方からリプレイ分(300枚)が同じだけ差し引かれます。もともと分母より分子の方が大きい(出玉率が100%を超えている)ため、同じ枚数を引いても分母の方が相対的に大きく削られる形になり、計算上の出玉率が110.0%から111.6%へと跳ね上がってしまいます。

この歪みは、集計する軸を変えても消えません。実投入枚数(IN)を基準に揃えて比較しても、結果は同じです。0/0方式でIN2,190枚に到達するには約845.9Gを要しますが、その追加ゲーム分でも通常通り抽選が行われるため、0/0方式の出玉率は同じ111.6%になります(変わるのは消化ゲーム数の方で、730Gから約845.9Gへと間延びします)。つまりこの水増しは、730Gという区間の切り取り方による偶然ではなく、0/0方式そのものが持つ構造的なものだということです。

モデル② 機械割が100%を下回る場合

逆に、実質出玉率が100%を下回る台ではどうなるでしょうか。たとえば設定1のような機械割97%の台を、同じ730G・リプレイ100回のモデルで計算してみます。

2
機械割が100%を下回る場合
3/3方式0/0方式
総IN730G×3枚=2,190枚2,190枚−300枚=1,890枚
総OUT2,190枚×97%=2,124.3枚2,124.3枚−300枚=1,824.3枚
差枚数−65.7枚−65.7枚(不変)
出玉率2,124.3÷2,190=97.0%1,824.3÷1,890=約96.5%

機械割が100%を上回るモデル①では0/0方式の方が数値が高く出たのに対し、100%を下回るこのケースでは逆に0/0方式の方が低く出ます。つまり0/0方式は、単に「出玉率を水増しする」計算方法なのではなく、その台の真の性能が100%(等価交換点)からどちらの方向にどれだけ離れているかを、実際より大きく見せる計算方法だと言えます。上振れの台はより高く、下振れの台はより低く出るという意味で、0/0方式は常に100%からの乖離を誇張する方向に働きます。

この時点で、「0/0」という文理解釈が単なる机上の空論ではなく、100%からの乖離を常に誇張してしまう、看過できない歪みを持つことが分かります。次章では、この歪みが実際の型式試験——特に上限が最も厳しい17,500G試験——において、現行のスペック設計と整合するのかどうかを検証します。

第3章

17,500回試験にリプレイの計算モデルを当てはめる

前章で見た「0/0」という読み方が持つ歪みは、実際の型式試験——なかでも最も長期かつ上限が最も厳しい17,500G試験——ではどう表れるでしょうか。

型式試験の基準を定める遊技機規則の別表第五(技術上の規格)は、回胴式遊技機(パチスロ)の17,500回試験における出玉率の範囲について、次のように規定しています。

条文

(ル) 設定ごと及び規定数ごとに、(ホ)に規定する試験を17,500回行つた場合において、獲得する遊技メダル等の総数が、投入をした遊技メダル等の総数の5分の3を超え、かつ、1.15倍に満たないものであること。 (ヲ) 設定ごと及び規定数ごとに、(ヘ)に規定するシミュレーション試験を17,500回行つた場合において、獲得することとなる遊技メダル等の総数が、投入をしたこととなる遊技メダル等の総数の1.15倍に満たないものであること。

遊技機規則 別表第五(1)ル・ヲ

(ル)実射試験では60%超〜115%未満、(ヲ)シミュレーション試験では115%未満という上限のみが、それぞれ規定されています。17,500G試験では、この「115.0%未満」という枠を実射・シミュレーションの両方で厳格に守る必要があります。

17,500G・設定6における「約117.3%」への跳ね上がり

別表第五(1)ハ(ニ)は、通常時におけるリプレイ(再遊技)の作動確率について「10/73(約1/7.3)以上」という下限を定めています。同条文が確率の変動を認める例外(a〜e)は、いずれも第1種特別役物または役物連続作動装置——つまりボーナスの当選・入賞・終了に関わる場面——に限られており、単に「AT中かどうか」という理由だけでリプレイ確率そのものを動かすことは、この例外規定のどれにも該当しません。

現在のAT機やスマスロの多くは、通常時のコイン持ち(ベース)を落として浮いた出玉枠を押し順ナビや高純増ATに集中させる設計が主流で、こうした事情もあり、通常時からAT中まで実質的なリプレイ確率を全状態でこの下限(10/73)付近に固定して設計するケースが一般的と言われています。解析サイトなどで見かける「単独リプレイ確率1/8.9」といった数字は、レア役の裏に割り当てられたリプレイフラグを含んでいないことが多く、すべてのリプレイフラグを合算した実質確率は、これより1/7.3に近い値になっているとされています。

この前提で、17,500G試験への影響を計算してみます。17,500G中に成立するリプレイ回数は、およそ17,500×10/73≈2,397回(メダル換算で7,191枚分)です。ここでは実質出玉率114.9%の台を検証対象とします。114.9%という数字を使うのは、これが仮想の数値ではなく、現行の多くの機種で設定6のスペックとして実際に公表されている値だからです(上限115%未満という枠のほぼ上限まで使い切った、市場でよく見る水準と言えます)。この台を、3/3方式・0/0方式それぞれで算定してみます。

「115%未満」という壁との矛盾

もし型式試験で「0/0」解釈がそのまま適用されているなら、メーカーが114.9%相当で設計した台でも、期待値ベースの計算上は117.3%(約+2.4pt超過)まで跳ね上がり、上限115%未満という試験の枠と正面から食い違うことになります(実際の17,500回試験には乱数によるブレがあるので、下振れれば通過し得る、という留保は付きます)。同じことは下限側にも言えます。モデル②で見た通り、0/0解釈は下振れ方向でも乖離を拡大するため、設定1のような低設定の台は、0/0解釈のもとで下限60%を割り込まないよう、逆に上振れを見込んで設計する必要が出てきます。

ただし、この「乱数によるブレで下振れれば通過し得る」という留保が及ぶのは、あくまで第1章で見た三段階のうち、乱数抽選を伴う(3)遊技機の試験(実射試験・シミュレーション試験)に限られます。試行に先立つ(1)設計書等審査は、申請書類に記載された出玉率の設計値そのものが技術上の規格に適合しているかを確認する、乱数の介在しない書類・理論値審査です。仮にメーカーが理論値の算出にも0/0という計算方法を用いているとすれば、申請書類上の理論値にも同様の影響が生じることになり、この段階で申請される理論値自体が114.9%ではなく117.3%となって、乱数のブレを待つ前の書類審査の時点で技術上の規格に抵触してしまいます。つまり「下振れれば通過し得る」という逃げ道は、(3)の実試行の段階にしか存在せず、(1)の理論値審査には及びません。

この不整合は、「0/0という計算方法を17,500回試験の出玉率計算にそのまま当てはめると、現行のスペック設計と数学的に整合しにくい」ということまでは確実に言えます。ただし、これは「だから型式試験では3/3方式が採用されている」という結論まで直接裏付けるものではありません。0/0でないことと、3/3であることは論理的に同値ではなく、公開されている条文・様式だけでは、実際にどう計上されているかまでは確認できないためです。

条文の曖昧さと、消去法による結論

第2章で見た通り、「0/0」という読み方は、試験を規定する条文の言葉を字義通りに追った結果として一応成立してしまうものであり、単純な勘違いや規格の誤用として切り捨てられるものではありません。しかし、上で見た「約117.3%」という数字は、この読み方が実際の型式試験で採用されているとは考えにくいことを強く示しています。

現行の型式試験がゲーム数を基準とした回数試験を中心に据えている以上、設定6のような上限ギリギリのスペックを17,500Gという長期試験で安定して115%未満に収め続けるには、リプレイもまた投入・獲得の双方でカウントされている——つまり単純な0IN・0OUTとしては扱われていないと考えるのが、制度との整合性からは自然な理解です。仮に0/0で運用されているなら、市場に114.9%クラスの設定6が実在し、なおかつ試験を安定して通過し続けていること自体が説明できなくなってしまいます。したがって、条文の文言だけを見れば0/0という読み方も排除できないものの、実務上はそのようには運用されていない可能性が高い、と推測するのが自然です。

ただし、その具体的な計上方法(3IN・3OUT相当かどうかを含め)を明文で定めた条文は、公開されている規則・解釈基準の中には見当たりません。これは条文の構造とゲーム性の実態、そして市場に実在するスペックとの整合性から導かれる消去法的な推測であり、断定できる一次資料上の事実ではないという留保はつけておきます。

まとめ 数字を見る側が意識すべきポイント

この記事から確実に言えること/言えないこと

最後に、一次資料から確認できる範囲と、そこからの推測とを分けておきます。

確実に言えること

公開資料だけでは断定できないこと

「機械割と出玉率」という言葉の表記にとらわれず、その数値がどのような法令基準と計算ロジック(リプレイ処理を含む)のもとで算出されているかを見通すことが、パチスロの出玉性能を正しく理解する鍵となります。

水丸教授のひとこと

最後に、個人的な感想を一つ。ユーザーがホールで期待値計算に使う「機械割(出玉率)」については、リプレイを3枚IN・3枚OUTで計上しているというのは間違いないと思っています。また、用語として日常的に使う分には「機械割」と「出玉率」、どちらも同じ計算式を指す言葉として、特に気にせず使って構わないと思います。どちらを使うかは個人の好みで自由です。ただし、その数字の算出条件・算出方法については、どこの立場からどんな意図で出した数字なのかは文脈を読み取る必要があります。

本記事は、パチンコ・スロットを題材に確率・統計的な考え方や仕組みを解説する教育目的のコンテンツです。記事内の計算結果や理論は、実際の遊技結果や収支を保証するものではありません。

パチンコ・スロットは、長時間・高頻度の利用によって生活に影響が生じる場合があります。遊技に際しては、ご自身の状況に合わせて適切にご判断ください。