機械割とは何か(定義・計算式)
「期待値とは何か」の記事で、「参加料100pt・1/6のサイコロで1の目が出たら賞金600pt」というゲームを扱った。ここでは同じサイコロゲームを使って、少し数字を変えてみる。参加料はそのまま100pt、賞金だけを570ptに変えたら、このゲームはどうなるだろうか。
参加料100pt・1/6のサイコロ・当たったときの賞金570pt
期待値はE(X)=570pt×(1/6)=95pt
期待値の記事で計算した通り、これは「平均するとどれくらい戻ってくるか」を表す数だった。この95ptを、参加料100ptに対する割合で表してみる。
このように、投入した分に対して平均してどれだけ戻ってくるかを割合で表したものが、スロットでいう機械割にあたる。
- 機械割
- 投入した枚数に対して、平均して払い出される枚数の割合。数学的には「期待値÷投入量×100」という同じ考え方だが、スロット業界ではこの割合を指す言葉として定着している。
スロットでの機械割も、定義はサイコロゲームとまったく同じである。
スロットでは、多くの機種が1回転につき3枚を投入する仕様になっている。ここでは、その3枚分の投入を60ptとして考える。
図1:機械割ごとの平均払い出しイメージ。105%なら60pt(3枚がけ)投入して平均63pt(3.15枚相当)が戻る計算になる。
たとえば3枚(60pt)を投入して、機械割105%の台であれば、平均して63pt(3.15枚相当)が戻ってくる計算になる。100%を超えているので、理論上は得なゲームだということになる。
しかし、ここで当然の疑問が浮かぶ。1回転で3.15枚だけ払い出す、などということは実際には起こり得ない。払い出しは必ず整数の枚数単位で行われるからだ。
では、どうやって平均3.15枚を実現しているのか?
図2:3.15枚は1回の払い出しではなく、通常時・ボーナス・ATの加重平均として実現される。
答えは、期待値の記事で扱った考え方そのものである。63pt(3.15枚)という数字は、1回1回の結果ではなく、「通常時の払い出し枚数」と「ボーナスやATによるまとめ払い」を、それぞれの起こりやすさに応じて平均した値にすぎない。こうした、結果ごとに「どれくらい起こりやすいか」を重みとしてつけて平均する方法を加重平均という。つまり、これは「結果×その結果が起こる確率」を全部足す、という期待値の計算そのものである。ほとんどの回転では少ない枚数しか出ないが、ときおり起こるボーナス・ATがまとめて大きく払い出すことで、平均するとちょうど3.15枚に落ち着く、という仕組みである。
このことを最もシンプルな形で確かめるために、ボーナスもATも一切ない、当たりが1種類だけのスロットを考えてみる。6枚ベル1種類のみ、約1.9回に1回当たる(正確には確率1/1.90476190476)というモデルだ。これだけで機械割105%になる。ちなみに機械割100%ぴったりにしたければ、同じ6枚ベルのまま確率だけ約2回に1回(1/2.00)にすればよい。
このモデルなら、当たりの種類が1つしかなく、当たりの大きさもほぼ一定なので、105%と97%のような差はすぐに目に見える形で現れる。ばらつきが小さいので、損得はほとんど「直線」のまま進んでいくからだ。
図3:横軸をG数、縦軸を差枚としたときのイメージ。機械割はこの直線の傾きにあたる。ただしこの直線は実際に存在するわけではなく、実際には当たり外れを繰り返しながら、平均的にこの傾きに近づいていく。
ここにボーナス・AT・設定差・技術介入……と、当たり方の種類を1つずつ足していくと、どう変わるか。これは実機がどんな歴史をたどってきたかという事実の話ではなく(私自身5号機以降の世代で、1号機からの変遷を検証したわけではない)、「単純なモデルに1個ずつ当たりの種類を足していったら、こうなるよね」というだけの話として捉えてほしい。
当たり方をいくら増やしても、機械割という平均値そのものは変わらない。変わるのは、その平均にたどり着くまでの「道のりの荒れ方」だけだ。
小出しの払い出しだけで帳尻を合わせるモデルから、ボーナスやATで一気に帳尻を合わせるモデルへと、分散度を高めていくにつれて、105%か97%かという損得の本質は何も変わっていないのに、その差は分散という霧の中に埋もれて見えなくなっていく。「勝っているのか負けているのか分からないまま、長く遊べてしまう」というあの感覚は、偶然ではなく、こうした設計の積み重ねの結果ではないか、というのが私の見方だ。
ここまでは、当たりが1種類だけの単純なモデルだった。実際のAT機はもう少し複雑で、「通常時」と「AT(当たり中のまとめ払い)」という2つの局面を行き来している。この考え方を式にすると、次のようになる。
期待差枚 = C×X − B/G×50
分母の「3B+3X」は、通常時とAT、合わせた総ゲーム数(B+X)に3枚がけを掛けた、総投入枚数そのものである。分子はそこに「期待差枚」(ATで増える分C×Xから、通常時に減る分B/G×50を差し引いた、1サイクルあたりの期待損益)を足したもので、つまりこの式は
という形をしている。この式は、当サイトのAT平均獲得枚数計算ツールが実際に使っている式そのものであり、アプリでは通常この式をAT平均消化ゲーム数(上式のX)について解くが、逆に他の値が分かっていれば、同じ式を機械割について解くこともできる。
機械割の公表値がどのような打ち方を前提に算出されているかは、必ずしも公開されていない。技術介入によって公表値を上回る実践結果が知られる機種もあれば、公表値とは別に完全攻略時の機械割を明記する機種も存在する。また、打ち方だけでなく、その数値がどのような条件(どの状態から何ゲームを対象に算出したか等)で計算されたものなのかも、必ずしも公開されているわけではない。そのため、公表されている機械割を「特定の条件下で厳密に計算された、常に一定の理論値」と単純に断定することはできない。
「機械割」と「出玉率」は何が違う?
パチスロは、投入した遊技メダルの枚数に対してどれだけの枚数を獲得できるかについて、法令上の性能基準を持っている。風営法に基づく国家公安委員会規則「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」には、回胴式遊技機の技術上の規格として、設定ごとに一定回数の試験(またはシミュレーション試験)を行った場合の「投入をした遊技メダル等の総数」と「獲得する遊技メダル等の総数」の比率について、試行回数ごとに上限・下限が定められている。
・400回の試験:獲得総数が投入総数の1/3を超え、2.2倍に満たないこと
・1,600回の試験:獲得総数が投入総数の2/5を超え、1.5倍に満たないこと
・6,000回の試験:獲得総数が投入総数の1/2を超え、1.26倍に満たないこと
(出典:遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則〔昭和六十年国家公安委員会規則第四号〕別表第5「回胴式遊技機に係る技術上の規格」より要約)
試行回数が増えるほど、許容される上限・下限の幅は狭く定められている。
ここで重要なのは、この規則が定めているのはあくまで投入枚数と獲得枚数の比率に関する基準であり、「機械割」や「出玉率」という名称そのものを法令上の指標として定義しているわけではない、という点である。
- 機械割・出玉率の法令上の位置づけ
- 「機械割」「出玉率」という言葉は、風営法体系の中で定義された法令用語ではない。法令が定めているのは、投入枚数と獲得枚数の比率を含む遊技機の性能基準であり、「機械割」「出玉率」という名称について、法令上の統一された定義が設けられているわけではない。
そのため、実際の使われ方には幅がある。メーカーの機種情報や攻略サイトでは、「設定6・機械割○○%」のように、機械割が機種の性能を示す公表スペックとして使われることが多い。一方、「出玉率」という言葉が同じような意味で使われることもあれば、理論上の払い出し割合というニュアンスで使われることもある。この使い分けは、業界全体で統一されているわけではない。
重要なのは、「機械割」と「出玉率」という呼び方の違いにこだわることではなく、その数字が何を指しているのか——公表されたスペックなのか、特定の条件でシミュレーションした値なのか、実際の遊技結果を集計した値なのか——を確認することである。
なお、ホールが使う「10割営業」「11割営業」のような「営業割」は、遊技機そのものの性能を表す機械割・出玉率とは対象が異なる別の概念である。同じ「割」という言葉を使うため混同されやすいが、遊技機の性能の話とホールの営業成績の話は分けて考える必要がある。
このように、同じ言葉や類似ワードを文脈によっては異なる意味で使用したり、ユーザー・ホール・メーカー・情報発信者のどの立場から見ているかによって、指標の意味や重視される数字が異なることがある。この点については、業界用語の認識のズレを扱う別のコラム記事で詳しく取り上げる予定である。
サイコロモデルで見る機械割の中身
先ほどの6枚ベル1種類だけのモデルは、機械割の「本質」を示すには十分だったが、実際のスロットはもっと複雑な当たり方を持っている。ここでは、期待値とは何かの記事で使ったE(X)=Σx・P(x)の考え方を、複数の当たり方が混ざったモデルに応用してみる。
BB当選確率:1/270、RB当選確率:1/440
270と440の最小公倍数は11,880。この2つの確率を、11,880面のサイコロ1個に統合できる。
・BB:11,880面のうち44面(1/270)
・RB:11,880面のうち27面(1/440)
・それ以外:11,809面(ハズレ、または通常時払い出しのみのゲーム)
図4:BB・RBの割合イメージ図。実際の11,880面のうち44面・27面という比率は視認できないほど小さいため、比率を誇張して表示した簡略図であり、正確な縮尺ではない。
ここで1つ注意したい。BB・RBが揃ったそのゲームは、まだ通常時のルール(3枚がけ)で行われた1ゲームである。ボーナスの消化(25G・10G)が始まるのは、その次のゲームからだ。つまり、当選が決まったゲーム自体は通常時の一部として数え、ボーナス消化分はそこに上乗せされる追加のゲームとして数える。
実戦では、内部で当選が決まったゲームと、実際にボーナス絵柄を揃えるゲームが必ずしも一致するとは限らない。揃うまでの間の内部的な挙動は機種によって異なる。ここではモデルを単純にするため、当選が決まったゲームでそのまま揃うものとして計算している。
- BB:当選ゲームの次から25ゲームにわたり、3枚がけ・1ゲームあたり13枚の払い出しが上乗せされる → 総投入75枚・総払い出し325枚(純増250枚)
- RB:当選ゲームの次から10ゲームにわたり、3枚がけ・1ゲームあたり13枚の払い出しが上乗せされる → 総投入30枚・総払い出し130枚(純増100枚)
これに通常時(小役のみ)の1ゲームあたりの払い出し枚数を加えて、11,880面分(=ダイス1周分。BB・RBの当選ゲームを含む)の総投入枚数・総払い出し枚数を計算する。以下では、この通常時1ゲームあたりの払い出し枚数を「通常時1Gあたりの平均払い出し枚数」と呼ぶことにする。
- 「ベース」という言葉について
- スロット業界で「ベース」というと、現在は「千円(50枚)あたりの回転数」を指す用法が広く定着している(本記事のGにあたる)。ただし元々は、投入量に対してどれだけ戻ってくるかという、割合に近い指標として使われていた言葉でもある。このように「ベース」という言葉自体が複数の意味で使われうるため、本記事ではこの言葉を使わず、常に「通常時1Gあたりの平均払い出し枚数」という説明的な言い方で統一する。
= 35,640 + 3,300 + 810 = 39,750枚
11,880面という数字自体、確率とは何かの記事で扱った「複数の独立試行を1つの巨大なサイコロに統合する」考え方の応用である。BBとRBという別々の確率を、最小公倍数によって同じ土俵の上でまとめて計算できるようにしている。ただし、BB・RBの当選ゲームの次からは、25G・10Gのボーナス消化ゲームが上乗せされるため、実際に消化するゲーム数は11,880ゲームより多くなる(この点は、後の練習問題でさらに詳しく扱う)。総投入枚数・総払い出し枚数という「合計」で比べているのは、そのゲーム数のズレを吸収するためでもある。
この計算が示しているのは、「機械割とは、通常時の払い出しと、ボーナスによるまとめ払いを、それぞれの起こりやすさで加重平均した値である」ということだ。図1で見た「63pt戻る」という単純な計算の中身を、実際のスロットに即した形で分解し直したのが、この11,880面モデルということになる。
練習問題 通常時3枚がけ・ボーナス中2枚がけのモデル
第2章では、BB・RB中もずっと3枚がけのまま(13枚の払い出し/G)という単純化を使っていた。実際の6号機ジャグラーシリーズの多くは、ボーナス中だけ賭け枚数が2枚に変わり、1ゲームあたり14枚の払い出しを受け取る(1Gで12枚の純増)という仕様になっている。この違いを踏まえて、機械割を計算し直してみる。第2章の数字とまぎれないよう、確率はあえて丸めた値に変えている。
3枚がけ、通常時1Gあたりの平均払い出し枚数1.75枚/G(300面すべてに共通。BB・RBの当選ゲームを含む)
BB:300面のうち1面(1/300)が当選。当選ゲームの次から21G、2枚がけ・14枚の払い出し/Gが上乗せされる
→ 1G純増12枚 → 21G×12枚=252枚増
RB:300面のうち1面(1/300)が当選。当選ゲームの次から8G、2枚がけ・14枚の払い出し/Gが上乗せされる
→ 1G純増12枚 → 8G×12枚=96枚増
当選が決まったゲーム自体も通常時の1ゲームとして数えるので、300ゲーム分(=ダイス1周分)に、ボーナス消化分(21G+8G=29G)を上乗せした、合計329ゲーム分で総投入枚数・総払い出し枚数を計算する。
= 900 + 42 + 16 = 958枚
総払い出し枚数 = 300×1.75(通常時、当選ゲームを含む) + 21×14(BB上乗せ分) + 8×14(RB上乗せ分)
= 525 + 294 + 112 = 931枚
BB・RBともに1/300、通常時払い出し1.75枚/Gという、実在の台にありそうな水準の数字を組み合わせると、機械割は約97.18%という、これも現実的な範囲に落ち着く結果になった。賭け枚数が局面ごとに変わっても、機械割そのものの計算の考え方は変わらない。
まとめ
機械割とは、投入枚数に対して平均してどれだけの枚数が払い出されるかを表す割合であり、パチスロでは設定ごとの機種性能を示す公表スペックとして使われる。ただし、その数値がどのような条件で算出されたものかは必ずしも公開されておらず、実際に遊技した結果とは意味が異なる。
ここで、こんな疑問を持つ人もいるかもしれない。「今日は朝からずっと新台に座って、10時間で5万円も突っ込んだのに、返ってきたのは3,000円だけだった。おかしいだろう、機械割97%なら、5万円×(1−0.97)=1,500円くらいしか負けないはずじゃないのか」と。
この考え方には、1つ大きな勘違いがある。機械割でいう「投入枚数」は、その日財布から出した金額ではない。
当たって増えた分をそのまま遊技に使い続ければ、同じptが何度も出入りを繰り返し、その都度、機械割の目減り分を浴びることになる。機械割97%というのは、「その日財布から出したお金の97%が返ってくる」という意味ではないのである。この、同じ資金が何度も遊技に投入されていく現象を、ここでは「資金の循環」と呼ぶ。機械割が同じでも、当たりの荒さや循環の度合いによって、体感的な収支は大きく変わってくる。この点については、当たりの荒さと資金の循環を扱う別記事で詳しく取り上げる。