なぜ「1/6」は正しいのか——確率の定義
サイコロを振って1が出る確率は1/6。ここでは、目の出やすさに一切偏りがない「理想化されたサイコロ」を考える。実際のサイコロには、重心のわずかな偏りや、投げる人の癖なども含めて様々な偏りがあり得るが、それは確率論そのものの話ではない。確率論はあくまで「もし完全に均等だったら」という仮定の上に組み立てる学問である。
サイコロには1〜6の目がある。どの目も同じくらい出やすいとすれば、「1の目が出る」という1つの結果が、6つの目のうち1つを占めている。これだけの話が、確率の正体そのものだ。トランプで1枚引いて特定のランク(A〜K)が出る確率が1/13なのも、13種類のランクがそれぞれ4枚ずつ、均等に存在するという、まったく同じ理屈による。
パチンコにも、319.6分の1・199.9分の1・99.9分の1のように、機種ごとに様々な大当たり確率がある。これも、考え方はサイコロと変わらない。実は、多くのパチンコ機は「65536個(2の16乗)」という数の箱(セル)を持っていて、その中の何百個かに大当たりが割り当てられている、というイメージで捉えることができる。例えば319.6分の1なら、65536個のうち約205個が当たりの箱、という具合だ(実際の割り当て方は機種ごとに異なるため、あくまで考え方を掴むための簡略化したイメージとして捉えてほしい)。数字の桁が大きくなっただけで、やっていることはサイコロの1/6と何も変わらない。この65536個の箱の仕組みについては、また別の記事で詳しく扱う。
- 確率とは何か
- 確率とは、ある出来事がどのくらい起こりやすいかを、0以上1以下の数で表したもの。起こりうるすべての結果を合わせた確率は、必ず1になる(これを正規化条件という)。サイコロのように、どの結果も同じくらい起こりやすい(等確率な)場合は、確率は「全体の中でその事象が占める割合」を数えるだけで求められる。
※厳密には、数学における確率はもっと抽象的な枠組み(測度論)で定義されており、「割合」という説明は理解のしやすさを優先した一つの捉え方にすぎません。
- 素事象と事象
- これ以上細かく分けられない、1つ1つの結果を素事象と呼ぶ(サイコロなら「1の目」「2の目」…の6つ)。素事象をいくつか集めたものを事象と呼ぶ(「偶数の目」なら、2・4・6という3つの素事象の集まり)。このサイトで繰り返し出てくる「◯◯面のサイコロ」というモデルは、すべてこの素事象の数え上げがベースになっている。
弱レア役、どれか1つでも出現する確率はどう計算するか
スロットには、当選確率が低い小役(レア役)と呼ばれるものがある。強弱で分かれることが多く、比較的当選しやすい弱レア役(チェリー・スイカ・弱チャンス目等)と、より当選確率が低い強レア役(強チェリー・強チャンス目等)に分けられることが多い。
ここでは、まず弱レア役の3種類を例に考えてみる。実践では「弱レア役のどれか1つでも出た」という括りで語られることが多いが、この「どれか1つでも出現する確率」は、どう計算すればいいのだろうか。
答えは単純で、それぞれの確率をそのまま足し算すればいい。ただし、これが成立するには1つ条件がある。
- 加法法則
- 互いに同時には起こらない結果(排反という)同士であれば、それぞれの確率を足し算するだけで、「どちらかが起こる確率」が求まる。もし排反でない(両方が同時に起こりうる)場合は、単純な足し算では重なった部分を二重に数えてしまうため、その重なりを一度引く必要がある。
ある機種の弱レア役が、チェリー(1/80)・スイカ(1/90)・弱チャンス目(1/100)の3種類だけだったとする(架空の設定)。
3つの数字をそのまま足すことはできないので、まず分母をそろえる。80・90・100の最小公倍数は3600なので、3600面のサイコロに置き換えると、
・チェリー:3600面のうち45面
・スイカ:3600面のうち40面
・弱チャンス目:3600面のうち36面
この3つは、1回の抽選で同時に起こることのない、別々の面として用意されている(排反な結果)。だから、「このどれかが出る」確率は、面の数をそのまま足すだけでいい。
45+40+36=121。つまり、3600面のうち121面。約3.36%だ。
一方で、この「そのまま足していい」というルールを鵜呑みにすると、思わぬ勘違いをすることもある。
機種によっては、「チェリーが単独で成立する場合」と「チェリーとボーナスが同時に成立する場合」が別々に用意されていることがある(架空の設定として、単独チェリー・BB重複チェリー・RB重複チェリーの3パターンを考える)。
この3パターンを、それぞれ別の面として用意されている結果だと考えれば、1回の抽選で同時に成立することはない。つまり、これらは互いに排反である。「チェリーが成立する確率」を知りたいだけなら、この3つを単純に足し算してよい。
では、「チェリーが成立する確率」ではなく、「単独チェリーの確率」を知りたい場合はどうだろうか。話は変わってくる。BB重複チェリーやRB重複チェリーまで一緒に数えてしまえば、それはもう単独チェリーの確率ではない。
つまり、確率を合算するときには、単に「同じ役の名前だから」という理由でまとめるのではなく、その合算によって何を表したいのかを先に決める必要がある。これは確率の計算だけでなく、実際のデータを記録・集計するときにも重要になる。
実戦データの現場でも、この「何を数えるか」は無視できない問題になる。例えばAタイプの機種では、チェリーの合算確率自体は設定に関わらずほぼ一定(1/35程度)に保たれていても、その内訳であるBB重複チェリーとRB重複チェリーには、設定差の大きさに違いを持たせる設計をしている機種などが存在する。ある設計例では、BB重複チェリーは設定1〜6でほとんど変わらないのに対し、RB重複チェリーは設定1から設定6にかけて倍近くまで開くことがある(架空の一例であり、実際の数値は機種ごとに異なる)。
だから、「チェリーが出た回数」だけをまとめて記録していては、この差はまったく見えてこない。単独チェリー・BB重複チェリー・RB重複チェリーを分けて数えて初めて、設定推測の材料になる情報が浮かび上がる。
「1/6を3回」と「1/216を1回」はなぜ同じ扱いにできるのか
サイコロを3回振って、3回とも「1」が出る確率はいくつだろうか。1回ごとの確率は1/6なので、直感的には「1/6を3回掛ければいい」と考える人が多いはずだ。実際その直感は正しいのだが、なぜ掛け算でいいのかを、少し立ち止まって考えてみる。
- 乗法法則
- 互いに結果が影響し合わない試行(独立という)であれば、それぞれの確率を掛け算するだけで、「両方とも起こる確率」が求まる。
1回目に何の目が出ようと、2回目・3回目のサイコロの出やすさは変わらない。これが「独立」ということだ。この場合、3回分の確率は
となる。
ここで面白いのは、この「1/216」という数字が、まったく別のモデルからも導けるということだ。
サイコロを3回振るのではなく、最初から216通りの結果を1つずつの面に対応させたサイコロを1つ用意し、そのうち1面だけに「当たり」の印をつけておいたとする。このサイコロを1回振って、その1面が出る確率は、当然1/216だ。
「サイコロを3回振って1のゾロ目が出る」ことと、「216通りを1つずつの面に対応させたサイコロを1回振って、あらかじめ決めておいた1面が出る」ことは、起きた出来事の中身(3回に分けて振ったか、1回で決まったか)はまったく違う。それでも、確率の計算上は、どちらも1/216として扱うことができる。
このように、複数の独立した試行の結果は、1つの大きなサイコロに置き換えて考えることができる。実はこれは目新しい考え方ではない。このサイトで繰り返し使ってきた「◯◯面のサイコロ」というモデルこそ、まさにこの発想そのものだ。複数の抽選や結果を1つの大きなサイコロに置き換えて考えることで、パチンコ・スロットの確率をイメージしやすくしている。乗法法則は、この置き換えがなぜ成り立つのかを数式で表したもの、と考えればよい。
職場の朝礼で、負けた方が相方にジュースを奢る、というじゃんけんがあったとする。もし同僚に10日連続で負けていたとしても、今日のじゃんけんの勝率が変わるわけではない。実は、これは会ったこともない画面の向こうのあなたと、今度初めてじゃんけんをするのと勝率としては何も変わらない。じゃんけんの結果は、それより前に何回負けていようと、次の1回には一切影響しないからだ(ただし、同僚にじゃんけんの出し方のクセを読まれている場合は話が別。それはもう「独立」な試行ではなくなる)。
パチンコ・スロットの話とのつながり
「パチンコとは何か」「スロットとは何か」の記事でも、独立試行(サイコロを何度振っても、前の結果は次の結果に影響しない、という考え方)にはすでに軽く触れた。乗法法則は、このような独立した試行を組み合わせるときに使える計算のルール、と考えればいい。
一方で、すべての試行が独立しているとは限らない。例えば「演出が出た後に当たっている確率」のように、ある出来事が起きたことを前提にすると、別の出来事の確率が変わる場合がある。こうした確率の考え方を条件付き確率という。この話は、統計の教室の「劇場ジャッジ」の記事ですでに扱っているので、気になる方はそちらを読んでほしい。
まとめ
確率とは、起こりうる結果に対して、その起こりやすさを0以上1以下の数で表したものだった。今回のサイコロやパチンコの例のように、どの結果も同じくらい起こりやすい(等確率な)場合は、数え上げるだけで確率が求まる、という話をした。サイコロの1/6も、パチンコの319.6分の1も、やっていることは同じで、ただ数え上げる箱の数が違うだけだ。
複数の確率を1つにまとめたいときは、その関係に応じて足し算や掛け算を使い分ける。チェリー・スイカ・弱チャンス目という役そのものを1つの事象として考えれば、これらは1回の抽選で同時には起こらない(排反な)結果同士なので、確率はそのまま足し算できた(加法法則)。
一方、サイコロを3回振って1のゾロ目を出すような、別々に行われる試行同士なら、確率は掛け算できた(乗法法則)。1回目の結果が2回目・3回目に影響を与えないからこそ、掛け算が成立する。
同じ「複数の確率をまとめる」という作業でも、「1回の抽選の中の話」なのか「複数回の試行をまたぐ話」なのかで、考え方や使うルールが変わってくる。この違いを押さえておけば、パチンコ・スロットの様々な確率がどう組み立てられているか、自分の手で数え直せるようになる。