「パチンコに詳しい」と一口に言っても、その詳しさにはいくつかの方向がある。
「この演出が来たら信頼度60%」「このパターンは激熱」といった演出知識に詳しいことも、もちろんパチンコを知る一つの形だ。
ただ、パチンコにはもう一つの詳しさがある。それは、パチンコというゲームそのものの利益構造を理解していることだ。大当たり確率とは何なのか。大当たりすると、平均してどれくらいの出玉を獲得できるのか。そうした数字をどう組み合わせて、期待値を算出するのか。
こうした仕組みを一つずつ理解していくと、複雑に見えるパチンコのスペックは、1Rトータル確率という一つの数字に集約できる。この数字を理解することが、パチンコの利益構造を理解する最初の一歩になる。
1Rトータル確率とは何か
パチンコとは何かの記事では、パチンコを「参加料を払ってサイコロを振り、当たれば賞金がもらえるゲーム」に置き換えて考えた。ところが、実際の機種のスペック表を開いてみると、その単純さはどこにもない。たとえばあるミドルスペック機なら、通常時確率1/319.6、確変中確率1/31.9、確変突入率60%、時短100回転…といった具合に、数字がいくつも並んでいる。近年はさらに、確変の中でもう一段階抽選が行われる「ラッキートリガー」のような仕組みまで搭載され、複雑さは増す一方だ。
これだけ見ると、「サイコロゲームに置き換える」という考え方はもう通用しないように思える。
だが実は、この複雑なスペックをもう一度一つの確率へ集約する方法がある。鍵になるのが、1Rトータル確率という考え方だ。
1Rトータル確率を求めるには、何が必要になるのだろうか。
まず必要になるのが、初当たり1回あたりの平均獲得ラウンド数だ。これは、初当たり時のそれぞれの振り分けについて、その後に獲得できるラウンド数を期待値として求め、それらを振り分けに応じて加重平均することで、最終的に「平均で何ラウンド獲得できるか」を算出したものだ。
この平均獲得ラウンド数が分かれば、通常時初当たり確率と掛け合わせるだけで、1Rトータル確率を求められる。具体的な算出方法については、別記事「トータル確率の算出方法」で詳しく扱う。
例えば、通常時初当たり確率が1/319.6で、平均獲得ラウンド数が34.6ラウンドの機種なら、
となり、1Rトータル確率は約1/9.24と求められる。
- 1Rトータル確率
- 通常時初当たり確率・ラウンド振り分け・継続率など、機種ごとに複雑に異なる仕様をすべて織り込んだ、「1ラウンドを平均何回転で獲得できるか」を表す確率指標。
この記事では、この1Rトータル確率によって、パチンコをもう一度一つのサイコロゲームとして考える方法を見ていく。
なぜ「1ラウンド」単位に戻すのか
実は、「トータル確率」という言葉自体は、パチンコ攻略の世界で古くから使われてきた。ただし、その定義は今とは少し違う形だった。
昔の機種は、大当たり1回あたりのラウンド数がほぼ固定されていた(15R確変・15R通常のみ、など)。ラウンド数が毎回同じなら、わざわざ「1ラウンドあたり」で計算し直す必要はない。「通常時初当たり確率÷平均連チャン数」という、1回の大当たり単位の計算だけで、十分に台の実力を語ることができた。
ところがその後、この前提が崩れる時期が続いた。ランクアップボーナスのように細かくラウンド数が振り分けられる機種が登場し、さらに「突然確変」のように、大入賞口が通常の1ラウンドよりずっと短い時間しか開かず、1回あたり0.4ラウンド相当の出玉しか得られないような大当たりまで生まれた。2017年前後には、大当たりと大当たりの間の「ハマり」自体が小当りRUSHという形で出玉に変わるスペックが大流行した。この頃になると、出玉は「何回大当たりしたか」では表せなくなり、小当りRUSHで獲得した出玉まで含めて、実際に何ラウンド分の出玉だったかへ換算して考える必要が生まれた。
現在は規則改正を経て、図柄揃いの大当たりを軸にしながら、チャージを組み合わせるなど、シンプルな構成の機種が再び増えている。一見、「今なら1回の大当たり単位でも十分では」とも思える。
しかし、それでも「10ラウンドなら毎回同じ出玉」とは限らない。多くの機種では、右打ち中の当たりは、最初の1ラウンドだけがV入賞ラウンドになっており、大入賞口が何度か開閉するため、その間は打ちっぱなしで消化する必要がある。このV入賞ラウンドでは通常ラウンドより無駄玉が増えやすく、同じ10カウント・同じ10ラウンドでも、1ラウンドあたりの純増出玉は均一にならない。つまり、右打ち中の10R当たりは「V入賞1R+通常9R」という異なる性質のラウンドを加重平均した出玉として考える必要がある。
1Rトータル確率は、こうした紆余曲折の中で生まれた考え方だ。ラウンド数が固定だろうと、0.4ラウンド相当の当たりが混ざろうと、小当りRUSHのように出玉の形が変わろうと、「1ラウンドあたりの実質確率」という共通の基準に変換してしまえば、どんなスペックにも対応できる。
1Rトータル確率をサイコロで考える
ここからは、1Rトータル確率をサイコロで考えてみよう。
例として、通常時初当たり確率1/300・平均獲得ラウンド数50Rの機種を考える。1Rの純増出玉は90玉とする。現行機では140玉前後の機種も多いが、50Rと組み合わせると約7,000玉という極端なモデルになってしまうため、ここでは考え方が追いやすい教育用の数字を採用している。
300面サイコロで1回当たると、平均50ラウンド獲得できるゲームを考えてみよう。300回転あたり平均50ラウンド獲得できるので、1ラウンドを獲得するのに必要な回転数は平均6回転になる。これを確率で表すと1/6だ。
そしてこの1/6という数字は、期待値とは何かの記事で登場した、1/6の確率で当たり、当たれば賞金がもらえるサイコロゲームとまったく同じだ。
先ほどの機種は、「6面のサイコロを1回振り、当たれば90玉もらえるゲーム」に置き換えて考えることができる。
1回転あたりの期待出玉を計算する
ここまでで、パチンコは「1/6で当たり、当たれば90玉もらえるサイコロゲーム」に置き換えられた。このゲームなら、1回振ったときに平均して何玉もらえるかも計算できる。期待値は、「もらえる出玉 × その確率」で求められるからだ。
これが、通常時を1回転させるごとに、平均して得られる出玉(期待値)ということになる。
ここで一旦立ち止まろう。この15玉という数字は、あくまで「1回転あたりの期待出玉」であって、まだ「何回転回せば得か」という具体的な回転数の話ではない。実際に相場としてよく語られる「ボーダーライン16.67回転」のような数字は、もう一段階別の計算を経て初めて出てくるものだ。
その代わりに、ここで立てるべき問いは1つだけだ。
「1回サイコロを振るたびに平均15玉もらえるゲームなら、参加料は何玉までなら損をしないのだろうか。」
サイコロゲームで考えれば、答えは単純だ。1回の参加料が15玉以下であれば、損はしない。
では、現実のパチンコでは、この15玉を回転数という実践的な単位にどう変換するのだろうか。
この問いに答えるのが、次の記事「ボーダー理論とは何か」の役目になる。
まとめ
スロット理論の記事では「機械割」という1つの数字で機種の性能を語ることができた。スロットには設定という機種スペック側の変動要素があり、機械割はその設定ごとに公表される数字だったからだ。
一方パチンコでは、特殊な機種を除けば機種スペックは基本的に一定であり、その代わりに1回転させるのに必要な発射数は台ごとに差がある。だからパチンコでは、機種スペックを表す機械割のような数字だけでは、収支効率までは語れない。
そこで、まず複雑なスペックを「1Rトータル確率」という共通の基準へ変換する必要がある。しかし、1Rトータル確率が分かっただけでは、まだその台が得なのか損なのかまでは判断できない。そこで次の記事では、この数字と実際の貸し玉の減り方を結びつけ、ボーダーラインという考え方がどのように導かれるのかを見ていこう。