ボーダーラインとは、交換率・出玉・持ち玉比率など一定の条件のもとで、損益が±0になる理論上の回転数のことだ。同じ交換率でも、持ち玉比率や技術介入などの条件によって値が変わる。機種ごとに決まった定数ではなく、条件によって動く数値なのだ。
パチンコで安定した勝ち方を考えるうえで、多くの人が最初に覚えるのが「ボーダーライン」「ボーダー理論」「ボーダー」といった考え方だ。ネットで「機種名 ボーダー」と検索すると、
●貸玉料金4円(250個あたり) 3.5円(28個)…17.5回転
というように、機種のスペックであるかのように数字が掲載されていることが多い。
こうした見た目のせいで、「この機種のボーダーは17.5回転」という、機種固有の決まった数字だと受け取ってしまうのは、無理もないことだ。しかし実際には、同じ交換率であっても、持ち玉比率や技術介入の有無といった他の条件によって値は動く。
では、このボーダーラインという数字は、具体的にどう作られているのだろうか。
ボーダーラインとは何か
「1Rトータル確率とは何か」の記事では、通常時初当たり確率1/300・平均獲得ラウンド数50R・1R純増出玉90玉の機種をモデルに、1Rトータル確率1/6を求め、通常時1回転あたりの期待出玉が15玉になるところまで計算した。
では、その15玉という期待出玉は、何と比べれば意味を持つのだろうか。
比較する相手は、1回転打つたびに減っていく手持ちの玉の量である。等価交換で考えるなら、1回転の消費玉数が15玉より少なければ期待値はプラス、多ければマイナスになる。
そして、1回転あたりに減る手持ちの玉の量は、実は台によって一定ではない。1回転打つのに必要な玉数を左右するのは、突き詰めれば始動口(ヘソ)への入りやすさそのものであり、これは台ごとに差がある。これがいわゆる「台の個体差(回る台・回らない台)」と呼ばれるものだ。
なお、この消費量の目安としてよく語られる「ベース」という数字は、左打ち中に打ち出した玉に対して戻ってくる玉の総量(スルー等の副入賞口への入賞分も含む)を表すものであり、始動口そのものの入りやすさと必ずしも一致するとは限らない。副入賞口にばかり玉が入り、肝心の始動口には入りにくい台も存在しうるため、あくまで参考情報として扱う必要がある。
- ボーダーライン
- 手持ちの玉(貸し玉・持ち玉)が基準となる玉数(一般的には250玉)だけ減るまでに何回転できれば、損益が±0になるかを表した理論上の回転数。遊技条件ごとに「◯◯回転」という1つの数字として語られ、台ごとの個体差(回る・回らない)を判断する物差しとして使われる。
「この台のボーダーは19.0」というように、ボーダーラインはまるで台に刻まれた固定の定数であるかのように語られがちだ。しかし実際には、ここまで見てきた1回転あたりの期待出玉や、交換率・持ち玉比率といった遊技条件が変われば、この数字も当然変わってくる。機種固有の固定値ではなく、条件によって変わる数値なのだ。この点は、「ボーダー理論の落とし穴:「超えているつもり」が生まれる理由」で改めて掘り下げる。
とはいえ、「1回転あたり何玉減るか」という形では、実際の遊技で台を比較するのは扱いにくい。そこで実践では、手持ちの玉(貸し玉・持ち玉)が250玉減るまでに何回転できたか、つまり250玉あたりの回転数の形で台の性能を語るのが一般的になっている。
基準玉数:ボーダーラインを何玉あたりで表すか(一般的には250玉)
貸玉数:100ptで借りられる玉数
交換玉数:100pt分の特殊景品に交換するのに必要な玉数
持ち玉比率:0〜1の割合で入れる(60%なら0.6)
ボーダーラインは、基準玉数・1R純増出玉・1Rトータル確率に、交換率(貸玉数と交換玉数)と持ち玉比率を加えて求められる。基準玉数は、4ptパチンコでは1000pt分の250玉を使うのが一般的だが、1ptパチンコでは貸し出しの単位に合わせて200玉や1000玉を基準にする人もいる。どの基準でも回転数は基準玉数に比例するだけで、台の良し悪しの判断は変わらない。この記事では、以降250玉を基準とする。ここでいう1R純増出玉は、ラウンド中の出玉や電サポ中の増減などを反映した、実質的な1Rあたりの純増出玉を指す。なお、ラウンド中の出玉と電サポ中の増減を別々に求め、最後に組み合わせる方法もある。
- 交換率
- 出玉を特殊景品に交換するときの条件を表す言葉。「率」と付くが、現場で割合として言うことはほとんどない。「この店の交換率は?」と聞かれたときの答え方は2通りある。多くは「28玉交換」のように、貸し玉100pt分(4ptパチンコなら25玉分)相当の特殊景品に交換するのに必要な玉数で答える。「3.57pt」のように、交換後の1玉あたりの価値で答える人もいる。4ptパチンコでは、25玉で交換できる店を等価交換と呼び、28玉交換は1玉あたり約3.57pt、30玉交換は約3.33ptにあたる。
- 持ち玉比率
- 遊技した総通常回転数のうち、貸し玉ではなく、大当たりで得た持ち玉(貯玉による再プレイを含む)で回した回転の割合。例えば、遊技した総通常時の1,000回転のうち600回転を持ち玉で回したなら、持ち玉比率は60%となる。
※特殊な地域や店によっては、貯玉の再プレイに手数料がかかる場合がある。その場合、再プレイで打つ玉は当日の出玉による持ち玉と同じ価値ではなくなるため、厳密には区別して考える必要がある。
式では本来、「貸玉数 ÷ 交換玉数」(4ptパチンコの28玉交換なら25 ÷ 28 ≈ 0.893)という0〜1の割合を交換率と定義し、「÷ 交換率」の形で書きたいところだ。しかし現場では、「交換率」は上記の用語の説明のように「何玉交換か」という玉数や、交換した後の1玉あたりの価値を表す言葉として定着していて、ややこしい。そこで式には、この割合の逆数にあたる「交換玉数 ÷ 貸玉数」をそのまま入れている(28 ÷ 25 = 1.12)。レートが変わっても式は成り立つ。例えば1ptパチンコで、100pt分の貸し玉100玉に対して112玉で交換する店なら、「貸玉数 ÷ 交換玉数」は同じく100 ÷ 112 ≈ 0.893となる。
等価交換でない店では、持ち玉比率が低い(貸し玉で回す割合が高い)ほど、特殊景品に交換する際の目減りの分だけ不利になる。例えば4ptパチンコの28玉交換の店なら、貸し玉は1玉4ptで借りているのに、得た出玉を特殊景品に交換するときの価値は1玉あたり約3.57ptになるからだ。一方、持ち玉で回す分には、この目減りはかからない。持ち玉比率が高いほどボーダーラインが下がるのは、このためだ。式の最後の{ }は、この目減りの影響を、(1 − 持ち玉比率)、つまり貸し玉で回した割合に応じて反映したものだ。では、この式に実際の数字を当てはめると何回転になるのだろうか。
次の章で、この250玉という基準をもとに、実際にボーダーラインの回転数を計算してみよう。
実際に計算してみる
「1Rトータル確率とは何か」の記事では、通常時初当たり確率1/300・平均獲得ラウンド数50Rの機種を例に、1R純増出玉90玉、1Rトータル確率1/6というモデルを考えた。ここでは話を単純にするため、等価交換(交換玉数=貸玉数)とする。
この条件では、式の最後の{ }は次のように1になる。
ボーダーライン =(250 ÷ 1R純増出玉)× 1Rトータル確率の分母
ボーダーラインの計算式の最後の{ }が1となり消えるため、ボーダーラインは250玉・1R純増出玉・1Rトータル確率の3つだけで求められる。まず、1ラウンドでもらえる報酬は90玉だった。
ボーダーラインは、250玉を基準に考えるのが一般的だ。では、250玉分の報酬を受け取るには、何ラウンド必要だろうか。
ただし、1ラウンドを手に入れるには、平均して何回転が必要なのか。これが1Rトータル確率の出番になる。1Rトータル確率は1/6だったので、1ラウンドを得るには平均6回転が必要、ということになる。
よって、2.78ラウンド分の報酬を受け取るために必要な回転数は、約16.67回転となる。つまり、通常時を16.67回転回すと、期待値として2.78ラウンド分を獲得する計算になり、その期待出玉が250玉になる、ということだ。
なお、同じ機種でも条件が変われば、この数字は動く。例えば4ptパチンコの28玉交換の店で、持ち玉比率が極端に低い(持ち玉比率20%)場合は、16.67 ×{0.2 +(1 − 0.2)× 28 ÷ 25}= 16.67 × 1.096 ≈ 18.27回転となり、ボーダーラインは約1.6回転上がる。
まとめ
ボーダーラインとは、損益が±0になる理論上の回転数だった。今回の例では、250玉という基準から16.67回転というボーダーラインが導かれた。
ただし、この16.67回転はあくまで一定の条件を前提とした理論値であり、条件が変われば数値も変わる。それでも、ボーダーラインを正しく使えば、台の個体差を判断する物差しとして十分に機能する。ボーダーラインを正しく使うための注意点は、「ボーダー理論の落とし穴:「超えているつもり」が生まれる理由」で詳しく解説している。
では、このボーダーラインさえ分かれば、それで台の実力を語り尽くせるのだろうか。次の記事「ボーダー理論ではなく、回転単価理論に改名すべき理由」では、この問いを掘り下げ、実測した回転数から回転単価を求める考え方を見ていく。
本記事は、パチンコ・スロットを題材に確率・統計的な考え方や仕組みを解説する教育目的のコンテンツです。記事内の計算結果や理論は、実際の遊技結果や収支を保証するものではありません。
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