POINT スロットは、パチンコと同じく「メーカーがあらかじめ定めた確率にもとづいて結果が決まる抽選ゲーム」です。パチンコとは何かで見た「サイコロゲーム」という土台はここでも変わりません。ただし、スロットでは設定によってさまざまな内部抽選確率が変化することや、機種によっては目押しなどの技術介入が存在することなど、パチンコとは異なる設計思想が採用されています。この記事では、こうした違いを軸に、内部抽選・リールの役割・AT/ARTがどう生まれたかまでを一本の流れで説明します。
第1章

スロットも、本質はサイコロゲームである

スロットも突き詰めれば、パチンコと同じくサイコロを振っているようなものです。1回ごとの抽選が独立しており、前の回の結果が次の回に影響しないという土台(独立試行)は、パチンコと共通しています。「さっき当たったから次は当たりにくい」というようなことは、従来機では原則として起こりません。この独立試行という前提そのものは、パチンコ・スロットとは何かでも触れている通りです。

ただし、近年のスマスロ・AT機では、この前提に注意が必要な場面が増えています。1回ごとの抽選自体は独立であっても、モード・内部状態・有利区間のフェーズ・それまでの差枚数といった「それまでの履歴」に応じて、その後の抽選の条件が変化するよう設計されている機種があるためです。つまり「抽選そのものの独立性」は保たれていても、「抽選が置かれている条件」自体は履歴に左右されうる、という二重構造になっています。本記事ではスロットの基本モデルを扱うため、この論点の詳細(機種ごとの設計差・数式化)はスロット理論の別記事に譲ります。

ただし、パチンコが玉を打ち出して入賞口に入るかどうかという形で抽選を受けるのに対し、スロットは主にレバーを操作することで抽選が行われ、その結果をリールの停止という形で受け取ります。どちらも本質は「確率による抽選」ですが、その結果をどのような演出・仕組みで見せるかが異なるのです。

第2章

パチンコとスロットで、何が固定され、何が変わるのか

同じサイコロゲームでも、パチンコとスロットでは「何が一定で、何が変動するか」が逆になっています。この違いを先に押さえておくと、以降の話が理解しやすくなります。

要素 パチンコ スロット
参加費(1回の抽選にかかるコスト) 台の個体差(回る台・回らない台)によりやや変動する 1回の投入枚数(多くは3枚)は機種内で一定だが、通常時のベース(一定枚数あたりの回転数)が設定や設定の奇数・偶数グループによって変わる機種もある
払い戻し(当たったときの獲得量) 大当たりの振り分け等により多少変動する 報酬の種類自体はあらかじめ設計されているが、ベル・チェリー等の小役成立確率やAT性能に設定差を持たせる機種もあり、結果として獲得量が変動する
当たり確率 デジパチでは機種ごとに固定されているのが基本(羽根物・権利物・設定付きパチンコ等は例外) 「設定」という段階によって変動する

つまり、パチンコ(本記事では最も一般的なデジパチを前提とします。羽根物・権利物等は当たり確率の設計自体が異なります)では参加費や払い戻しが多少変動するのに対し、当たり確率は基本的に一定です(通常時と確率変動〔確変〕中とで数値自体は変わりますが、その数値そのものは機種の設計として最初から決まっており、遊技者やホールが自由に選べるものではないのが基本です)。一方スロットでは、参加費や基本設計はほぼ一定なのに、当たり確率そのものが設定によって変わります。この「逆転」こそが、スロット特有の駆け引きを生んでいる部分です。

第3章

設定とは何か

設定とは、サイコロの当たり目そのものを変える仕組みだと考えると分かりやすくなります。

【用語】
設定
スロットの機種ごとに用意された1〜6段階の内部パラメータ。数値が大きいほど遊技者に有利な確率になるよう設計されており、設定6が最も高確率、設定1が最も低確率になっているのが一般的な原則である。

たとえば、「パチンコとは何か」でも登場した、面がたくさんある空想上のサイコロを使って考えてみましょう。ここでは100面あるサイコロを用意します。設定1では当たりの面が2つ(2/100)だとすれば、設定6では当たりの面が3つ(3/100)に増える、というイメージです。設定によって当たりやすさは確かに変わりますが、その差は「2倍・3倍」のような劇的なものではなく、面が1つか2つ増える程度の、わずかな積み重ねだということが伝わればここでは十分です。設定とは「賞金の金額を増やす仕組み」ではなく、「サイコロの当たりやすさそのものを調整する仕組み」だと考えると本質をつかみやすくなります。

もちろん、これはあくまで概念モデルです。実際の機種では、ボーナス確率・AT初当たり確率・小役確率など複数の内部抽選が別々に存在し、それぞれの確率が設定ごとに個別の割合で変化します。「設定が上がれば当たりが一律に出やすくなる」という単純な話ではなく、どの抽選がどの程度設定差を持つかは機種ごとに設計が異なる、という点には注意が必要です。

第4章

リールは、結果を「表示」する装置である

多くの人は「リールが止まったから当たった」と感じますが、実際の順序は逆です。当たりかどうかは、多くの場合レバーを操作した瞬間の内部抽選ですでに決まっており、リールはその結果を目に見える形で表示しているにすぎません(ただし一部の機種では、レバーONで当落の大枠が決まったあとも、リールを1リールずつ止めるたびに細かな追加抽選が行われ、当たりの中身がそこで少しずつ確定していく、という凝った演出構成を採るものもあります)。レバーを強く叩いたり、ボタンを力いっぱい押したりしても、その力の強さ自体が抽選結果を変えることはありません。

ここでスロットならではの要素として登場しうるのが、目押しという技術介入です。内部抽選の結果、当たる役自体は決まっていても、機種によっては、その役に対応する図柄をリール上で狙って止められるかどうかがプレイヤーの停止操作にかかっています。成立役やボーナス抽選そのものは運の領域ですが、当たった役を取りこぼさずに受け取れるかどうかに技術が介入する余地がある機種が存在する、という点が、パチンコにはないスロット特有の性質です(一方で、目押しを必要としない、あるいは目押しの有無が結果にほとんど影響しない設計の機種も多くあります)。

なお、メイン基板が行う小役・ボーナスなどの基本的な抽選はレバーを操作した瞬間(レバーON時)に行われますが、AT継続抽選やテーブル選択など一部の抽選については、最後のリールを止めた瞬間(第3停止)など、別の契機で行うメーカー・機種も伝統的に存在します。どちらの契機で行われているかは機種ごとに異なるため、断定はできませんが、抽選が必ずしも一つのタイミングだけで完結しているとは限らない、という点は押さえておくとよいでしょう。

第5章

サイコロゲームは、どう複雑になっていったのか

スロットの機種の歴史を年代順に追いかけるのではなく、「基本形のサイコロゲームがどう発展してきたか」という設計の考え方から見ていきます。ここから先は、設定による違いはいったん考えず、先ほどのサイコロの例を使いながら、期待値を保ったまま「ゲーム性がどのように発展したか」を説明するための簡略化したモデルとして読み進めてください。

基本形:一括で受け取る当たり

最も単純な形は、参加費100ptで6面サイコロを振り、1の目(1/6)が出たら600ptを獲得する、というモデルです。期待値は600×1/6=100ptとなり、参加費と釣り合っています。確率も報酬も固定されており、当たれば一度にすべてを受け取る、単純な形です。

当たりを複数種類に分ける(Aタイプ的な発想)

ここから、同じ当たりでも報酬の大きさに段階をつける発想が生まれます。たとえば1の目なら400pt、2の目なら200ptというように、当たりの目を2種類に増やしたとします。期待値は400×1/6+200×1/6=100ptとなり、先ほどの基本形とまったく同じです。つまり、総期待値を変えずに、当たりを複数種類(たとえばBIGボーナス・REGボーナスのような大小2段階)に分けただけ、という理解で十分です。メーカーは期待値そのものを大きく変えなくても、600ptを一度に渡すか、400ptと200ptに分けて渡すかを工夫するだけで、まったく違うゲーム性を作ることができます。

報酬を一括ではなく、複数回の抽選に分けて渡す(AT・ARTの発想)

さらに発展すると、当たった時点で報酬を確定させず、そこからもう一度サイコロを振らせ続ける仕組みが登場します。ここでは、通常時に振る白いサイコロとは別に、当たった後だけ使う赤いサイコロを用意して考えてみましょう。白いサイコロで1の目(1/6)が出たら、100ptを受け取ったうえで「報酬獲得ゲーム」に入り、赤いサイコロに持ち替えます。赤いサイコロでは、1の目(1/6)が出たら終了、それ以外の目(5/6)が出るたびに追加で100ptを受け取ってもう一度振り続ける、というルールにします。スロットでは、この「報酬獲得ゲーム」がAT・ARTと呼ばれています。

このモデルの期待値検算
AT中の平均継続回数 = (5/6) ÷ (1/6) = 5回
AT中の期待獲得量  = 100pt × 5回 = 500pt
AT当選時の期待獲得量 = 100pt(当選時)+ 500pt(AT中)= 600pt
全体の期待値    = 600pt × 1/6 = 約100pt
AT中に何回続くかは、1の目が出るまで5以外が続く回数(幾何分布)として計算できる。結果として、基本形・Aタイプと同じ約100ptに一致する。

継続率・上乗せ・差枚管理といった要素はすべて、「最終的に何pt獲得できるかを、一度の当たりで確定させず、複数回の抽選を重ねて変動させる仕組み」としてまとめられます。600ptを一括で受け取るゲームから、600pt前後を何回かの抽選を経て受け取るゲームへと発展した、と考えると分かりやすくなります。

少し余談ですが、通常時には「1なんてなかなか出ない」と感じるのに、AT中になると「どうせすぐ1が出て終わる」と感じる人は少なくありません。しかし、このモデルでは毎回サイコロを振るたびに「1が出る確率」は常に1/6のままです。状況が変わっても確率そのものは変わらないのに、人の感じ方は大きく変わる、という面白い例でもあります。

現代のAT機

現在主流のAT機・スマスロは、この「報酬を複数回の抽選に分けて渡す」という発想をさらに積み重ねたものです。初当たり・上乗せ・継続・有利区間の管理など、複数のサイコロを何段階も振り重ねた結果として、最終的な獲得枚数が決まります。仕組みが複雑に見えるのは、この「報酬をどう小分けにして渡すか」という設計が発展してきた結果であり、根っこにある「抽選を積み重ねて結果が決まる」という考え方自体は変わっていません(ただし前述の通り、モードや内部状態、それまでの差枚数といった履歴が抽選の条件に影響する場合がある点には注意が必要です)。

サイコロの例を、実際のスケールに戻すと

ここまでは説明を分かりやすくするため、6面サイコロという極端に単純化したモデルで考えてきました。実際のスロットでは、もちろん1/6のような大ざっぱな確率ではなく、はるかに細かい確率で抽選が行われています。最後に、ここまでのモデルを実際のスケール感に戻してみます。

モデル 当たり確率 平均獲得量
サイコロ(基本形) 1/6 600pt
Aタイプ(機械割100%前後のイメージ) ボーナス合算 約1/150前後 約200枚前後(BIG・REGを平均したイメージ)
AT機(機械割100%前後のイメージ) AT初当たり 約1/350前後 平均約560枚前後

これらの数値は、特定の機種や設定を指すものではなく、あくまで「機械割100%前後の代表的なイメージ」として示したものです。実際の機種は設定によってこれらの数値が変化しますが、ここで比較したいのは設定1〜6の優劣ではなく、Aタイプ・AT機という設計思想の違いです。サイコロの例では「当たりにくいほど賞金が大きい」という単純な関係でしたが、Aタイプは「当たりやすい代わりに1回の報酬が小さい」、AT機は「当たりにくい代わりに1回の報酬が大きい」という、リスクとリターンの関係になっていることが見えてきます。6面サイコロの例と実際のスロットで違うのは、サイコロの面の数や報酬の大きさだけです。考え方そのものは変わりません。

水丸教授のひとこと 個人的に面白いと思うのは、パチンコが「参加費・払い戻しが変動し、確率は固定」という設計なのに対し、スロットは「参加費・報酬の設計はほぼ固定で、確率そのものが変動する」という、ちょうど逆の作りになっている点です。同じ「サイコロゲーム」という土台から出発しても、どこに変数を置くかでまったく違う遊技性になる。この設計思想の違いを比べてみると、パチンコとスロットがなぜ別の攻略理論・別の統計的アプローチを必要とするのかが、見えてきます。
第6章

まとめ

スロットは、パチンコと同じく確率にもとづく抽選ゲームですが、設定によってさまざまな内部抽選確率が変動する点、そして機種によっては目押しなどの技術介入が存在する点で異なります。リールは抽選結果を表示する装置にすぎず、一括で受け取る当たりというモデルが、複数種類の当たり(Aタイプ的な発想)、そして複数回の抽選に分けて渡す当たり(AT・ART)へと発展してきた結果が、現在のAT機です。

パチンコもスロットも、本質はサイコロゲームです。ただしスロットは、そのサイコロゲームに設定・複数の内部抽選・技術介入・ATなどの仕組みを積み重ねることで、ゲーム性を大きく発展させてきました。複雑に見える現在のAT機も、土台まで分解すると「サイコロゲームを少しずつ発展させてきた結果」です。そう考えると、スロットという遊技の全体像が見えやすくなるでしょう。

次の記事では、以下のテーマを順番に解説していきます。これ以降の記事では、このサイコロモデルを土台に、より実際の数値へ近づけながら考えていきます。

本記事は統計的な考え方の紹介を目的としたものであり、特定の遊技方法や勝率を保証するものではありません。パチンコ・スロットは長時間・高頻度の利用が生活に影響を及ぼす場合があります。心当たりのある方は、専門の相談窓口へのご相談もご検討ください。